「Despite it raining」って文法的にOK?

“Despite it raining, we went out.” って言うけど、
前置詞の後ろに S+V(it raining)って本来ダメじゃないの?



いいところに気づいたね。確かに学校文法では「前置詞+S+V」はNG。
でも現代英語では、“despite it raining” は自然で正しい使い方なんだ。
基本ルールの確認:前置詞の後ろに来るのは名詞(句)
通常、despite や in spite of の後ろには「名詞」や「動名詞(V-ing)」が来ます。
- Despite the rain, we went out.
- In spite of being tired, he kept working.
では、「despite it raining」は一見ルール違反のように見えますが、
実は文法的に説明できる“例外的に認められた構造”なんです。
解釈①:非定形節(non-finite clause)としての「it raining」
現代英語では、「it raining」全体を一つの名詞句として扱います。
つまり “despite [the fact that it was raining]” が省略された形なんです。
- Despite it raining, we went out.
= Despite the fact that it was raining.
この場合、it は主語(主格)で、「雨が降っているという事実」をまとめて名詞的にしていると考えます。
解釈②:動名詞構文(gerund clause)としての説明
もう一つの見方は、「it raining」を「its raining」の省略形とする説です。
動名詞構文では、本来「所有格+V-ing」の形を取るからです。
- I don’t like his coming late.(=He comes late が嫌い)
- I don’t like him coming late.(現代英語ではこちらが一般的)
同じように、despite its raining も正しいのですが、
現代英語では目的格の it を使った despite it raining が普通です。
3つの形の比較
| 表現 | 構文タイプ | フォーマル度 | 自然さ | 説明 |
|---|---|---|---|---|
| despite the rain | 名詞句 | ◎一般的 | ★★★★★ | 最も基本的・安全 |
| despite it raining | 非定形節 / 動名詞構文 | ◎自然 | ★★★★☆ | 現代英語で広く使われる |
| despite its raining | 動名詞構文(古風) | やや硬い | ★★★☆☆ | 形式的で書き言葉 |
| despite it was raining | 接続節(誤り) | × | ★☆☆☆☆ | 文法的に誤り |
ネイティブの感覚と使用例
- Despite it raining, we went hiking.(雨だったがハイキングした)
- Despite it being late, she stayed up studying.(遅いのに勉強を続けた)
- Despite it snowing heavily, the match continued.(大雪にもかかわらず試合は続いた)
実際、Oxford や Cambridge の辞書でも “despite it raining” は容認されており、
話し言葉・書き言葉どちらでも自然に使われます。
まとめ:it は主格として機能している
- “it” は形式主語で、主格として使われている
- “it raining” 全体が名詞句(非定形節)として機能
- “despite it raining” は「雨が降っているという事実にもかかわらず」
- “despite its raining” は古風で形式的
- “despite it was raining” は誤り
ポイント: 前置詞の後ろに「S+V」が直接来ているように見えても、
実際には “it raining” が名詞化された一まとまりの構造です。
📚 関連記事(vsシリーズ/構文シリーズ)
おわりに
今回のテーマ「Despite it raining」は、一見すると「前置詞のあとに S + V が来ているように見える」ため、多くの学習者が混乱します。
しかし、文法的に見るとこの it は「形式主語」ではなく、動名詞 raining を補う名詞的な it(意味上の主語)です。つまり、構造上は despite + 名詞句 として扱われるため、正しい表現なのです。
ただし、フォーマルな文では Despite the rain や Although it was raining の方が自然に響くこともあります。状況に応じて言い換えを使い分ける柔軟さが大切です。



英文法を「間違い探し」で終わらせず、「なぜそうなるのか」まで理解できると、自信をもって英作文が書けるようになります。



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なまえ:Akken
高校英語教員。”初心者にとことん向き合う”をモットーに情報発信しています。
所有資格:TOEIC825,英検準1級,英語教授資格TESOL certificate Ⅳ
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